伝説
タイヤル族の起源の言い伝えには、いくつかの系統があります。一つは、賓斯博干(Pinsbkan、現在の南投県仁愛郷瑞岩(ずいがん)一帯)で大きな岩が裂け、そこからタイヤル族の始祖が歩み出たというもの。もう一つの系統では、大覇尖山(だいはせんざん/Papak Waqa)を祖先の発祥の地としています。始祖は子孫に狩猟、機織り、耕作を教え、族人のために gaga を定めました。タイヤル族の伝統として最もよく知られているのが「紋面」(patas)です——男子は出草(首狩り)をやり遂げる胆力を、女子は機織りの技を身につけてはじめて、成人と栄誉のしるしである紋面を顔に刻む資格を得られました。けれども紋面の意味は、この世だけにとどまりません。タイヤル族は、人が死ぬと魂は「虹の橋」(Hongu Utux)へ向かい、橋の向こう側が祖霊の地だと信じています。橋には祖霊の見張りがいて、生涯 gaga を守り、紋面の資格を持つ魂だけが虹の橋を渡り、祖先と再会できるのです。顔に刻まれたその紋は、こうして祖霊のもとへ通じる通行証となりました。
