伝説
曹操はおそらく史上もっとも報われないファンでした。関羽を包囲して降伏させたあと、美酒とごちそう、高い官位と厚い俸禄、さらには天下の名馬・赤兎馬(せきとば)まで贈ります——関羽は赤兎馬だけは受け取りましたが、ほかには何ひとつ心を動かしませんでした。頭にあったのはただひとつ、義兄弟の契りを結んだ長兄・劉備がどこにいるのか、ということだけです。
知らせが届くと、関羽は二人の義姉を守って即座に出発しました。曹操は道中に五つの関所を設けて行く手をはばみますが、関羽はそれをすべて斬り抜けていきます。これが千年語り継がれる「過五関斬六将(かごかんざんろくしょう/五つの関を越え六人の将を斬る)」です。目の前の栄華を捨て、たった一騎で千里を駆け、当時なにも持たなかった兄のもとへ向かったのです。
約束を命より重く見るこの義理堅さこそ、台湾の人々が何百年も変わらず関公を拝みつづける理由です——商売でいちばん怖いのは信用を守らない相手。だからこそ人々は、商売をもっとも信用を重んじる神様に託すのです。
