伝説
太歳信仰の源は、じつは天文学です。昔の人は、木星(歳星)がおよそ十二年で天球を一周することを観測し、天球を十二等分しました。木星は毎年そのうちの一区画を通るので、その区画には太歳という神霊が一柱ずつ当番として守りにつく——これがやがて、六十柱の太歳が交代で務める完全な制度へと発展し、どの太歳にもそれぞれ名前と役職があります。
民間には、背筋がひやりとする話が伝わっています。昔、ある人が迷信など信じないとばかりに、わざわざ太歳の方角で土を掘り返しました。すると肉の塊が出てきた——どんどん大きくなり、いくら切っても切り尽くせないのです。震えあがったその人は、急いで肉塊を地中に埋め戻し、祭壇を設けて祀りました。「太歳の頭の上で土を動かしてはならない」という禁忌は、こうして伝わったといいます。
面白いことに、この話に出てくる「太歳菌」は自然界に実在します。地中に生え、見た目が肉の塊のような菌類で、昔の人が見て肝を冷やしたのも無理はありません。一方は星空に、もう一方は土のなかの謎につながる信仰——太歳はおそらく、もっとも「分野横断的」な神様でしょう。
